2026年11月07日

2026年11月9日|ちねん内科クリニック(川口市安行吉岡)
糖尿病の飲み薬で、世界でいちばん多く使われている薬をご存じでしょうか。答えはメトホルミン(商品名:メトグルコ、メトホルミン塩酸塩錠)です。中世ヨーロッパで使われていた薬草にルーツをもち、糖尿病の薬として60年以上処方され続けてきました。SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬といった新しい薬が登場して「誰にでもまず最初に」という絶対的な第一選択薬ではなくなりましたが、よく効く・安全・安いの3つがそろった、いまも糖尿病治療の土台となる薬です。
この記事では、循環器内科医の立場から、メトホルミンが「どうやって効くのか」「どれくらい効くのか」「なぜ60年も使われているのか」、そして安全に使うために知っておいてほしい腎機能とシックデイの注意点を、2026年11月時点の情報でまとめました。
- メトホルミンは肝臓が糖を作りすぎるのを抑え、筋肉でインスリンを効きやすくする飲み薬。インスリンを無理に出させないので、単独では低血糖がほとんどなく、体重も増えません
- 血糖を下げる力は強く、HbA1cを1〜1.5%程度下げます。用量を増やすほど効果が高まる(日本では1日2,250mgまで)のが特徴です
- 60年以上の使用実績があり、大きな副作用はまれ。1998年のUKPDS試験では心筋梗塞と死亡を減らすことが示され、その効果は試験終了後10年たっても続いていました
- いちばん多い副作用は吐き気・下痢などの胃腸症状。少量から始めて食後に飲めば、多くの方は慣れていきます
- 腎機能が低下した方(eGFR 30未満)には使えません。発熱・下痢・嘔吐で食事がとれない日(シックデイ)、造影剤検査、手術、深酒のときは休薬が必要です
- 薬代は1錠10円ほど。1か月分で300〜600円程度(3割負担)と、糖尿病薬のなかで群を抜いて安い薬です
- 当院では、心不全・慢性腎臓病・心血管疾患のない2型糖尿病の方には、いまもメトホルミンを第一選択にしています
1. メトホルミンとは?——薬草から生まれ、60年以上使われてきた薬
メトホルミンの物語は、ヨーロッパの野原に咲くガレガ(学名 Galega officinalis、別名フレンチライラック)という薬草から始まります。この草は中世から「尿が多く出る病気」の民間薬として使われていました。20世紀に入り、ガレガに含まれるグアニジンという成分に血糖を下げる作用があることがわかります(1918年に報告したのは日本人研究者の渡辺氏でした)。この成分をもとに、1922年にメトホルミンが化学的に合成されました。
ただし、当時はインスリンが発見された直後で、メトホルミンは長いあいだ忘れられていました。1957年、フランスの医師ジャン・スターン(Jean Sterne)が糖尿病の治療薬として復活させ、「グルコファージ(糖を食べる薬)」という名前で発売。日本でも1961年に「メルビン」の名前で登場し、以来60年以上、糖尿病の治療に使われてきました。
途中には逆風もありました。同じビグアナイド薬の仲間であるフェンホルミンが、乳酸アシドーシスという重い副作用のため1970年代に販売中止となり、メトホルミンまで「危ない薬」と誤解されてしまったのです。日本では長く1日750mgまでしか使えない時代が続きました。
流れを変えたのは、1998年に発表された英国の大規模試験UKPDSです。メトホルミンが血糖を下げるだけでなく、心筋梗塞や死亡を減らすことがはっきり示され、世界中のガイドラインで「第一選択薬」になりました。日本でも2010年に、海外と同じ1日2,250mgまで使える「メトグルコ」が承認され、ようやく本来の力を発揮できるようになりました。
そして2015年以降、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が心臓や腎臓を守る効果を次々に証明し(SGLT2阻害薬の記事・GLP-1受容体作動薬の記事)、糖尿病治療の選択肢は大きく広がりました。それでも、メトホルミンは世界で最も多く処方されている糖尿病の薬であり続けています。
2. どうやって血糖を下げるのか——肝臓・筋肉・腸にはたらく
糖尿病の薬の多くは「膵臓からインスリンを出させる」か「インスリンを直接補う」ものです。メトホルミンは違います。インスリンの量を増やすのではなく、からだがインスリンに反応しやすい状態を作る薬です。主なはたらきは3つあります。
- 肝臓:糖の「作りすぎ」を抑える——肝臓は夜間や空腹時に、からだのために糖を作って血液に送り出しています(糖新生)。2型糖尿病では、この工場が止まらなくなり、朝起きたときの血糖が高くなります。メトホルミンは肝臓のエネルギーセンサー(AMPキナーゼ)にはたらきかけ、糖の過剰生産を抑えることで、とくに空腹時血糖を下げます。これがいちばん大きな作用です
- 筋肉・脂肪:インスリンの効きをよくする——インスリンが「血液中の糖を細胞に取り込め」と命令しても、肥満や運動不足があると細胞が反応しにくくなっています(インスリン抵抗性)。メトホルミンは筋肉が糖を取り込みやすい状態にし、インスリンの効きを改善します
- 腸:糖の吸収をゆるやかにし、GLP-1を増やす——近年の研究で、メトホルミンは腸でも多く働いていることがわかってきました。食事の糖がゆっくり吸収されるようにし、腸から出る血糖調節ホルモンGLP-1の分泌を増やし、腸内細菌のバランスも変えます。胃腸の副作用が出やすいのも、腸で強く働くことの裏返しです
インスリンを無理に出させないため、メトホルミンだけでは低血糖をほとんど起こしません。また、インスリンの量が増えないので体重が増えにくく(むしろ1〜2kg減る方が多い)、中性脂肪やLDLコレステロールもわずかに下がります。「血糖を下げるのに、太らない・低血糖にならない」——これが、メトホルミンが長年選ばれてきた理由です。
3. 血糖を下げる力は強い——用量に比例して効く
「古い薬だから効果は弱い」と思われがちですが、それは誤解です。メトホルミンは単独でHbA1cを平均1〜1.5%下げ、これはDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬(0.6〜0.9%程度)より大きく、糖尿病の飲み薬のなかでトップクラスです。
そして、メトホルミンの大きな特徴は用量依存性——つまり、量を増やすほど効果が高まることです。海外の用量比較試験では、1日500mgでHbA1cが約0.6%下がるのに対し、2,000mgでは約2.0%下がり、空腹時血糖の低下も19mg/dLから84mg/dLへと量に応じて大きくなりました。日本人を対象とした試験でも、1日750mgより1,500mgの方が効果が大きく、1,500mgで足りない場合は2,250mgまで増やすことでさらに下がることが確かめられています。
そのため当院では、胃腸の調子を見ながら1,000〜1,500mgまで増やすことを基本にしています。「メトホルミンを飲んでいるのに効かない」という方のなかには、昔の基準のまま1日500〜750mgで止まっている方が少なくありません。副作用がなければ増量するだけで、血糖が大きく改善することがよくあります。
やせている方にも効きます。メトホルミンは「肥満の人の薬」というイメージがありますが、日本人の研究では、体格(BMI)にかかわらず同じように効果があることが示されています。日本糖尿病学会の治療アルゴリズムでも、肥満の有無を問わず使える薬として位置づけられています。
4. 60年の実績——心筋梗塞と死亡を減らした、最初の糖尿病薬
糖尿病の薬は「血糖の数字を下げる」だけでは意味がありません。目的は、心筋梗塞・脳卒中・腎不全・失明といった合併症を防ぎ、長く元気に過ごすことです。この点で、メトホルミンには60年の歴史に裏打ちされた実績があります。
- UKPDS 34(1998年):英国で、肥満のある2型糖尿病の方753人を約10年追跡。メトホルミンで治療した方は、食事療法中心の方と比べて心筋梗塞が39%、糖尿病に関連する死亡が42%、あらゆる原因の死亡が36%減少しました。血糖の下がり方が同じでも、SU薬やインスリンで治療した方にはこの効果が見られなかったことから、メトホルミン特有の「心臓を守る力」と考えられています
- UKPDSの10年後追跡(2008年):試験が終わって血糖の差がなくなった後も、メトホルミンを使っていた方では心筋梗塞が33%、死亡が27%少ない状態が10年続きました。早い時期からよい治療を受けておくと、その「貯金」が長く残る——「レガシー効果」と呼ばれる現象です
- 大きな副作用がまれ:世界中で膨大な人数が長期間使ってきましたが、きちんとルールを守って使えば、命にかかわる副作用(乳酸アシドーシス、後述)は10万人・年あたり数件と非常にまれです。がんや認知症のリスクを増やすという報告もありません
60年以上使われて「大きな問題が出ていない」こと自体が、新しい薬にはない安心材料です。新薬は発売後10年、20年たってから思わぬ副作用が見つかることがあります。メトホルミンはすでにその「時間の試験」に合格しています。
5. 「第一選択薬」ではなくなった?——SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬との関係
2015年以降、SGLT2阻害薬が心不全の入院と腎臓病の進行を、GLP-1受容体作動薬が心筋梗塞・脳卒中を減らすことが、大規模試験で次々に証明されました。これを受けて、米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインは2022年以降、「すべての人にまずメトホルミン」という書き方をやめ、心血管疾患・心不全・慢性腎臓病のある方には、メトホルミンを使っているかどうかにかかわらず、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を使うよう推奨しています。2026年版でも同じ考え方で、一方それ以外の多くの方では、メトホルミンは今も「基本となる薬」の位置にあります。
日本糖尿病学会の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版、2023年)」も同じ考え方です。すべての人に共通の第一選択薬は置かず、①その方の病態(インスリンの出が悪いのか、効きが悪いのか)②安全性 ③心臓・腎臓を守る「追加の利益」④費用などの背景の順に考えて薬を選びます。インスリンの効きが悪いタイプ(肥満や内臓脂肪のある方)には、メトホルミンは最初に挙げられる薬の一つです。
「メトホルミンは時代遅れ」ではなく、「役割分担がはっきりした」と私は捉えています。SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、心臓や腎臓にすでに問題がある方、そのリスクが高い方にとって「臓器を守る薬」として欠かせません。一方で、そうした問題がない多くの方にとって、血糖を確実に下げ、太らず、低血糖を起こさず、安く、60年の安全実績がある薬は、メトホルミン以外にありません。そして実際には、心臓や腎臓を守る新しい薬を使う方でも、血糖を下げる土台としてメトホルミンを併用することがほとんどです。SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の大規模試験に参加した方の7〜8割はメトホルミンを飲んでいました。つまり「新しい薬の効果」は、メトホルミンという土台の上で証明されたものなのです。
6. とても安い——1錠10円、1か月300〜600円
メトホルミンのもう一つの大きな価値は費用です。薬価(薬の公定価格)は250mg錠で1錠10.8円(2026年11月時点)。先発品のメトグルコも後発品もほぼ同じ価格で、糖尿病薬のなかで最も安い薬の一つです。1日1,500mgを飲んでも薬剤費は月1,000〜2,000円、3割負担なら300〜600円程度です。
| 薬の種類(例) | 1か月の薬剤費(3割負担) | 特徴 |
|---|---|---|
| メトホルミン(1日1,500mg) | 約300〜600円 | HbA1c −1〜1.5%。低血糖・体重増加なし |
| DPP-4阻害薬(先発品) | 約1,000〜1,500円 | HbA1c −0.6〜0.8%。副作用が少ない |
| SGLT2阻害薬(先発品) | 約1,300〜1,600円 | HbA1c −0.6〜0.9%。心不全・腎臓を守る |
| GLP-1受容体作動薬(週1回注射) | 約3,000〜10,000円 | HbA1c −1〜2%。体重減少、心臓・腎臓を守る |
※薬剤費のみの目安(2026年11月時点の薬価から計算)。診察料・検査料・調剤料は含みません。
糖尿病は何十年も付き合う病気です。薬が安いことは、治療を長く続けるうえでとても大切な要素です。当院では、新しい薬を使う場合でも「本当にその方に必要か」「メトホルミンで十分な部分はないか」を考え、費用の負担も含めてご提案しています。
7. 副作用——胃腸症状が中心、ビタミンB12にも注意
メトホルミンの副作用で圧倒的に多いのは胃腸症状です。飲み始めの方の2〜3割に、吐き気・食欲低下・下痢・おなかの張り・軟便・金属のような味といった症状が出ます。幸い、多くは数日〜2週間ほどで慣れて軽くなり、どうしても続くために中止になる方は5%程度です。
- 少量から始める——1日500mg(250mg錠を朝夕1錠ずつ)から始め、1〜2週間ごとに増やします。急に多く飲まないことが最大のコツです
- 食後に飲む——食直前または食後の服用が決められていますが、胃腸症状が出やすい方は食後のほうが楽です
- 1日2〜3回に分ける——1回の量を少なくすると、胃腸への刺激が減ります
- つらければ一度戻す——増やして症状が出たら、前の量に戻してしばらく様子を見て、再び増やします
もう一つ知っておきたいのがビタミンB12です。メトホルミンを長期間(数年以上)、とくに高用量で飲んでいると、腸でのビタミンB12の吸収が減り、血液中の濃度が下がることがあります。ビタミンB12が不足すると貧血や手足のしびれ(神経障害)が起こり、糖尿病の神経障害と見分けがつきにくいのが問題です。米国糖尿病学会は定期的な測定を勧めており、当院でも長く服用している方、貧血やしびれのある方、胃薬(PPI)を併用している方には血液検査で確認し、不足があれば補充します。
8. 乳酸アシドーシスと腎機能——「使えない人」を守るルール
メトホルミンで唯一、命にかかわる副作用が乳酸アシドーシスです。からだの中で乳酸がたまり、血液が酸性に傾く状態で、放置すると意識障害やショックに至ります。ただし頻度は非常にまれで、きちんとルールを守って使った場合は10万人・年に数件以下。日本で報告された事例を日本糖尿病学会が調べたところ、ほとんどが「使ってはいけない人」や「休むべき状況」で使われていたケースでした。つまり、ルールを守れば防げる副作用です。
いちばん大切なルールは腎機能です。メトホルミンは腎臓からそのまま尿に排泄されるため、腎臓の働きが落ちると血液中に薬がたまり、乳酸アシドーシスの危険が高まります。日本糖尿病学会の「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」では、腎機能をeGFR(推算糸球体ろ過量)で評価し、次のように定めています。
| 腎機能(eGFR) | メトホルミンの使い方 | 当院の対応 |
|---|---|---|
| 60以上 | 通常どおり使える(最大2,250mg) | 年1〜2回、腎機能を採血で確認 |
| 45〜59 | 使えるが、1日1,500mgを上限に | 半年ごとに腎機能を確認。脱水に注意 |
| 30〜44 | 慎重投与。1日750mgを上限に。新たに始めることは原則避ける | 減量し、3〜4か月ごとに確認。SGLT2阻害薬など腎臓を守る薬への切り替え・併用を検討 |
| 30未満・透析中 | 禁忌(使えません) | 中止し、別の薬に変更 |
このほか、重い肝臓病、心不全や呼吸不全で酸素が足りない状態、過度の飲酒習慣、脱水を起こしやすい状態の方も使えません。また、腎機能は年齢とともに自然に低下するため、75歳以上の方に新たに始めるかどうかは慎重に判断し、使う場合も少量にとどめます。メトホルミンを飲んでいる方には、当院では定期的な採血で腎機能を確認し、数値に応じて用量を調整しています。
乳酸アシドーシスのサインを知っておいてください。強い吐き気・嘔吐、腹痛、ひどいだるさ、筋肉痛、息苦しさや深く速い呼吸、意識がぼんやりする——こうした症状が重なったら、メトホルミンを飲むのをやめて、すぐに受診してください。とくに、脱水・深酒・発熱・下痢が引き金になります。
9. シックデイ・造影剤・手術・お酒——「休む日」のルール
乳酸アシドーシスを防ぐために、メトホルミンには「休むべき日」があります。SGLT2阻害薬と同じく、覚えておいていただきたいルールです。
- シックデイ(発熱・下痢・嘔吐・食事がとれない日)は休薬——からだが脱水に傾き、腎臓の働きが一時的に落ちるため、乳酸がたまりやすくなります。食事がとれない日は血糖も上がりにくいので、休んで問題ありません。普通に食べられるようになったら再開してください
- ヨード造影剤を使う検査(造影CTなど)の前後は休薬——造影剤は一時的に腎臓に負担をかけます。添付文書では、検査の前に休薬し、造影剤を使ってから48時間は再開しないことになっています。検査を受ける病院で「メトホルミンを飲んでいる」と必ず伝えてください
- 手術の前後は休薬——絶食と手術のストレスで乳酸アシドーシスが起こりやすくなります。通常は手術の2日ほど前から休み、食事がしっかりとれるようになってから再開します。手術が決まったら、主治医と担当の先生の指示を確認してください
- 深酒をする日は飲まない——アルコールは肝臓で乳酸を処理する能力を下げるため、過度の飲酒とメトホルミンの組み合わせは添付文書で「併用禁忌」とされています。適量(1日ビール中瓶1本・日本酒1合程度まで)であれば問題ありませんが、宴会などで多く飲む日は、その日の分を飛ばしてください
- 水分をこまめにとる——とくに夏場、運動のあと、利尿薬やSGLT2阻害薬を併用している方は、脱水に注意してください
当院では、メトホルミンやSGLT2阻害薬を始める方に「シックデイの薬リスト」をお渡しし、休む薬・続ける薬(インスリンは自己判断で中止しない)を事前にご説明しています。迷ったときは、休薬してからご連絡いただければ大丈夫です。
10. 当院でのメトホルミンの使い方
ここまでの内容をふまえて、当院では次のような考え方でメトホルミンを使っています。
- 心不全・慢性腎臓病・心血管疾患(心筋梗塞・狭心症・脳梗塞など)のない2型糖尿病の方には、メトホルミンを第一選択にしています。よく効き、安全で、安いからです
- 心不全・慢性腎臓病・心血管疾患がある方、そのリスクが高い方には、臓器を守る効果が証明されたSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬をまず使い、血糖がさらに必要な場合にメトホルミンを組み合わせます
- 1日500mgから始め、胃腸の様子を見ながら1〜2週間ごとに増量し、1,000〜1,500mgを目標にします。それでも足りなければ2,250mgまで増やすか、ほかの薬を組み合わせます
- 開始前と開始後は定期的に腎機能(eGFR)を採血で確認し、数値に応じて用量を調整します。長く飲んでいる方にはビタミンB12も確認します
- 開始時にシックデイ・造影剤・手術・お酒のルールをお伝えし、「シックデイの薬リスト」をお渡しします
- eGFRが45を下回ってきたら減量し、30に近づく前に、腎臓を守る効果のあるSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬への切り替えを計画します
11. どんな方に向いている?——相談の目安
| こんな方は | 考え方 |
|---|---|
| 健診でHbA1cが高いと言われ、はじめて糖尿病の薬を検討する | 食事・運動の改善と並行して、メトホルミンが最初の選択肢になります |
| 肥満や内臓脂肪があり、インスリンの効きが悪いタイプ | もっとも効果を発揮しやすいタイプです |
| 低血糖が心配、体重を増やしたくない | 単独では低血糖がほとんどなく、体重も増えません |
| 薬代をできるだけ抑えたい | 月300〜600円程度(3割負担)。最も安い糖尿病薬の一つです |
| すでにメトホルミンを飲んでいるが、1日500〜750mgで血糖が下がらない | 腎機能に問題がなければ、増量で改善することが多いです |
| 心不全・慢性腎臓病・心筋梗塞や脳梗塞の既往がある | SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を優先し、必要に応じてメトホルミンを併用します |
| eGFRが45未満、75歳以上、脱水しやすい、お酒を多く飲む | 慎重に判断します。使う場合も少量にとどめ、腎機能をこまめに確認します |
| eGFR 30未満・透析中・妊娠中 | 使えません。別の薬をご提案します |
12. よくある質問
飲み忘れたらどうすればいいですか?
気づいたときが次の食事に近ければ、その分は飛ばして次の食事のときに1回分を飲んでください。2回分をまとめて飲む必要はありません。メトホルミンは1回抜けても血糖が急に上がる薬ではないので、慌てなくて大丈夫です。
ずっと飲み続けないといけませんか?
食事・運動・体重の改善でHbA1cが十分に下がれば、減量や中止を検討できます。ただ、2型糖尿病は時間とともに進行する病気で、やめると血糖が戻る方が多いのも事実です。「やめる」ことを目標にするより、「少ない薬でよい状態を長く保つ」ことを一緒に目指しましょう。
メトグルコと後発品(ジェネリック)に違いはありますか?
有効成分も用量(最大2,250mg)も同じで、価格もほぼ同じです。古い「メルビン」「グリコラン」系の製剤は最大用量が750mgに制限されているため、当院では2,250mgまで使えるメトグルコまたは「メトホルミン塩酸塩錠MT」を処方しています。
SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬と一緒に使えますか?
使えます。むしろ、これらの新しい薬の大規模試験に参加した方の大半はメトホルミンを併用していました。作用のしくみがまったく違うため、血糖を下げる効果は足し合わさります。ただし、どちらもシックデイには休薬が必要なので、ルールをまとめてご説明しています。
お酒はまったく飲めませんか?
適量(1日ビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス2杯程度まで)であれば問題ありません。避けていただきたいのは「大量に飲む」ことで、過度の飲酒は添付文書上の併用禁忌です。宴会などでたくさん飲む日は、その日のメトホルミンは飛ばしてください。
妊娠を考えています。飲み続けてよいですか?
日本の添付文書では、妊娠中・妊娠の可能性のある方への使用はできません(海外では妊娠中に使う国もあります)。妊娠を希望される段階で、インスリンなどへの切り替えを一緒に計画しますので、早めにご相談ください。なお、メトホルミンは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の排卵誘発にも使われる薬で、婦人科で処方されている方もいます。
メトホルミンだけなら低血糖にならない、というのは本当ですか?
本当です。メトホルミンはインスリンを直接出させる薬ではないため、単独では血糖を「下げすぎる」ことがほとんどありません。食事を抜いた日や運動した日も、この薬だけで低血糖になることはまずありません。ただし、SU薬やインスリンと併用している方では低血糖が起こりえますので、併用薬の調整が必要です。
糖尿病のご相談は、ちねん内科クリニックへ
ちねん内科クリニック(内科・循環器内科)
当院は、循環器内科医が糖尿病・高血圧・脂質異常症をまとめて診るクリニックです。「とりあえず新しい薬」でも「とりあえず昔からの薬」でもなく、血糖・体重・腎機能・心臓の状態(心エコー・BNP・尿アルブミンなど)を確認したうえで、お一人おひとりに合った薬を、費用の負担も含めてご提案します。メトホルミンを飲んでいて「胃腸の調子が悪い」「本当に効いているのか不安」「腎機能が気になる」という方も、お気軽にご相談ください。
- 所在地:埼玉県川口市安行吉岡
- 診療時間:9:00〜13:00/15:00〜18:00
- 休診日:金曜・土曜(日曜は午前のみ)
- 健診で「血糖が高い」「HbA1cが高い」と言われた方も、結果をお持ちのうえご相談ください
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。薬の選択・用量・休薬の判断は、医師が診察のうえで行います。記載した臨床試験の数値は、それぞれの試験に参加した方々の平均値であり、個人の効果を保証するものではありません。承認状況・薬価などは2026年11月時点の情報です。
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- 日本糖尿病学会「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」(2020年3月18日改訂)
- メトグルコ錠250mg・500mg、メトホルミン塩酸塩錠250mgMT 各電子添文(2026年)