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糖尿病の食事療法を医師が徹底解説|何を・どれだけ・どの順番で食べる?

糖尿病の食事療法を医師が徹底解説|何を・どれだけ・どの順番で食べる?|川口市安行吉岡の内科・循環器内科・糖尿病内科|ちねん内科クリニック

2026年11月02日

糖尿病の食事療法を医師が徹底解説|何を・どれだけ・どの順番で食べる?

「糖尿病と言われたら、好きなものはもう食べられないのでは」「ご飯は抜かないといけないのでは」——診察室でよく伺う不安ですが、どちらも誤解です。糖尿病の食事療法は「我慢」ではなく、何を・どれだけ・どの順番で食べるかを整えること。特別な病人食ではなく、ご家族と同じ食卓で続けられる「健康食」です。

この記事では、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」の考え方に沿って、1日に食べてよい量の計算方法から、主食・野菜・たんぱく質の選び方、食べる順番、飲み物・間食・お酒との付き合い方、外食やコンビニでの工夫まで、循環器内科医の立場から詳しく解説します。

この記事のポイント
  • 食事療法は糖尿病治療の「土台」。薬を使っている人にも、使っていない人にも必要
  • 1日の目安エネルギー = 目標体重 × 25〜30kcal(デスクワーク中心の場合)
  • 主食は「抜く」のではなく「量を決める」。白ご飯なら1食150g前後が一つの目安
  • 野菜・きのこ・海藻から先に食べ、ひと口20〜30回噛んで20分以上かける
  • 最初の一歩は「甘い飲み物をやめる」。効果が大きく、今日から始められる

1. 食事療法が糖尿病治療の「土台」である理由

糖尿病の治療は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3本柱で成り立っています。近年は心臓や腎臓を守る効果が証明された薬(SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など)が登場し、治療の選択肢は大きく広がりました。それでも食事療法が「土台」であることは変わりません。理由は3つあります。

  1. 血糖は食べたものから作られる:食後の血糖上昇の大部分は、食事に含まれる炭水化物(糖質)によるものです。入口を整えないまま薬だけで抑えるのは、蛇口を開けたまま床を拭くようなものです。
  2. 血糖以外も同時によくなる:適切な食事は体重・血圧・LDLコレステロール・中性脂肪・尿酸をまとめて改善します。薬1種類では、ここまで広い効果は得られません。
  3. 合併症を防ぐ、もっとも費用のかからない治療:糖尿病で本当に怖いのは血糖値そのものではなく、10年・20年かけて進む合併症——心筋梗塞、脳梗塞、腎不全(人工透析)、網膜症(失明)、神経障害です。食事療法はこれらをまとめて予防します。
循環器内科医の視点

糖尿病の方は、そうでない方に比べて心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクが2〜4倍高いことが知られています。私が食事療法を重視するのは、血糖を下げるためだけではなく、血管を守り、心臓と腎臓を10年先まで元気に働かせるためです。体重が3〜5%減るだけでも、HbA1c・血圧・脂質は目に見えて改善します。英国の研究(DiRECT試験)では、食事療法で大幅に減量した2型糖尿病の方の約半数が、1年後に薬を使わずにHbA1c 6.5%未満を保てる「寛解」の状態になりました。

2. 血糖値はどうやって上がる?——炭水化物・たんぱく質・脂質の違い

食事療法を理解するうえで最初に押さえたいのが、「何が血糖を上げるのか」です。三大栄養素のうち、食後の血糖を直接・速やかに上げるのは炭水化物(糖質)です。たんぱく質は少量がゆっくりと、脂質はほとんど直接は上げませんが、消化を遅らせて食後数時間たってからの血糖に影響します。

食後の血糖の上がり方のイメージ:炭水化物(糖質)は速く大きく上げ、たんぱく質と脂質はゆっくり小さく上げる食後の血糖の上がり方のイメージ血糖値食後の時間 →食前1時間2時間3時間食前の血糖糖質は「速く・大きく」上げるたんぱく質・脂質は「ゆっくり・小さく」炭水化物(糖質)たんぱく質脂質
図1:食後の血糖の上がり方のイメージ。血糖を直接・速やかに上げるのは炭水化物(糖質)です

ここで大切なのは、炭水化物 = 糖質 + 食物繊維という関係です。糖質は血糖を上げますが、食物繊維は血糖を上げないどころか、一緒に食べた糖質の吸収を緩やかにしてくれます。つまり食事療法の基本戦略は、次の2つに集約されます。

糖質の「量」をコントロールし、食物繊維を「増やす」。この2つを軸に、エネルギー全体を適正な範囲に収めます。

同じ糖質量でも、白米より玄米や麦ごはん、食パンより全粒粉パンのほうが食物繊維が多く、血糖の上がり方は緩やかです(血糖の上がりやすさの指標を「GI値」と呼びます)。ただし、玄米にしても糖質の量そのものはほぼ変わりません。「種類」より「量」が優先——これが大前提です。

3. 1日に食べてよい量(エネルギー)を計算してみましょう

食事療法の出発点は、「自分は1日にどれくらい食べてよいのか」を知ることです。ガイドラインでは、まず目標体重を決め、それに身体活動量に応じた係数をかけて1日のエネルギー量を求めます。

1日の目安エネルギーの計算:身長(m)×身長(m)×22で目標体重を出し、目標体重×25〜30kcalで1日のエネルギーを求める1日に食べてよい量(エネルギー)の計算のしかたSTEP 1目標体重を計算する身長(m)×身長(m)×22=目標体重(kg)例)身長165cm → 1.65 × 1.65 × 22 = 約60kg※65歳以上は「22〜25」で計算(やせすぎ・筋肉の減少を防ぐため)STEP 21日の目安エネルギーを計算する目標体重(kg)×25〜30 kcal=1日の目安エネルギー例)60kg × 25〜30 = 1,500〜1,800 kcal/日※デスクワーク中心なら25〜30、立ち仕事・家事なら30〜35、力仕事・活発な運動なら35〜日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」の考え方をもとに作成。体重やHbA1cの推移を見ながら主治医と調整します。
図2:1日の目安エネルギーの計算のしかた(糖尿病診療ガイドライン2024の考え方をもとに作成)

目標体重の決め方

年齢目標体重の計算式
65歳未満身長(m) × 身長(m) × 22
65〜74歳身長(m) × 身長(m) × 22〜25
75歳以上身長(m) × 身長(m) × 22〜25(体の状態や食事量をみて個別に判断)

「22」は、もっとも病気になりにくいとされるBMI(体格指数)です。高齢の方の目標が少し高めなのは、やせすぎによる筋肉の減少(サルコペニア)や虚弱(フレイル)のほうが、かえって寿命を縮めるためです。

身体活動量による係数

身体活動のレベル目安係数(kcal/目標体重1kg)
軽い労作デスクワーク中心、家の中で過ごすことが多い25〜30
普通の労作立ち仕事、通勤や家事、軽い運動の習慣がある30〜35
重い労作力仕事、活発な運動習慣がある35〜

たとえば身長165cm・デスクワーク中心の50歳の方なら、目標体重は 1.65 × 1.65 × 22 = 約60kg、1日の目安は 60 × 25〜30 = 1,500〜1,800kcal となります。

肥満のある方へ:目標体重まで一気に落とす必要はありません。まずは今の体重の3%減(80kgの方なら2.4kg)を3〜6か月で目指しましょう。それだけで血糖・血圧・脂質の改善が期待できます。

計算した数字はあくまで出発点です。体重とHbA1cの推移を見ながら、主治医と一緒に調整していきます。

4. 栄養バランスの目安と「お皿の割合」

ガイドラインでは、1日のエネルギーのうち炭水化物を40〜60%、たんぱく質を20%まで、残りを脂質(20〜30%程度)とすることが目安とされています。1,600kcalの場合、炭水化物は約200g、たんぱく質は60〜80g、脂質は約45gに相当します。

とはいえ、毎食グラムを計算するのは現実的ではありません。日々の食事では、「主食・主菜・副菜」を毎食そろえ、お皿の割合で考えるのがおすすめです。

お皿の割合の目安:お皿の半分を野菜・きのこ・海藻、4分の1を主食、4分の1を主菜にし、汁物・乳製品・果物を添えるお皿の割合は「半分が野菜、残りを主食と主菜で半々」野菜きのこ・海藻お皿の半分主食4分の1主菜4分の1副菜:野菜・きのこ・海藻をたっぷり主食:ご飯・パン・麺・いも類主菜:魚・肉・卵・大豆製品+ 添えるもの汁物(みそ汁・スープ)1日1杯まで・具だくさんに(減塩)乳製品(牛乳・無糖ヨーグルト)1日コップ1杯程度果物1日1単位(80kcal):みかん2個程度ジュース・菓子・揚げ物・アルコールは「お皿の外」。頻度と量を決めて楽しみます。
図3:お皿の割合の目安。半分を野菜・きのこ・海藻に、残りを主食と主菜で半々に
  • お皿の半分:野菜・きのこ・海藻(副菜)。サラダ、おひたし、煮物、具だくさんの汁物など
  • 4分の1:主食(ご飯・パン・麺・いも類)
  • 4分の1:主菜(魚・肉・卵・大豆製品)。手のひら1枚分が目安

「糖尿病診療ガイドライン2024」では、画一的なカロリー制限だけでなく、地中海食や緩やかな糖質制限食など、その人の病状や好みに合った複数の食事法が選択肢として示されています。大切なのは「唯一の正解」を探すことではなく、自分が続けられる形を見つけることです。

5. 主食(ご飯・パン・麺)は「抜く」ではなく「量を決める」

食事療法でいちばん効果が出やすく、いちばん誤解が多いのが主食の扱いです。結論から言うと、主食は抜かずに、1食の量を決めて食べるのが基本です。

白ご飯の量の目安:100gで156kcal・糖質約36g、150gで234kcal・糖質約53g、200gで312kcal・糖質約71g白ご飯の量とエネルギー・糖質の目安100g小盛(子ども茶碗1杯)150g普通盛(茶碗に軽く1杯)200g大盛156 kcal糖質 約36g234 kcal糖質 約53g312 kcal糖質 約71g日本食品標準成分表2020年版(八訂)より。コンビニのおにぎり1個はご飯100〜110g程度です。
図4:白ご飯の量とエネルギー・糖質の目安(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉より)

1日1,600kcalの方なら、白ご飯は1食150g(茶碗に軽く1杯)前後が一つの目安です。小柄な女性や高齢の方は120〜150g、体格が大きく活動量の多い男性は180〜200gというように、エネルギーの目安に合わせて調整します。

主食の「質」を上げるコツ

  • 白米を麦ごはん・玄米・雑穀米に(食物繊維が増え、血糖の上がり方が緩やかに)
  • 食パンは全粒粉パン・ライ麦パンに。菓子パンは「主食」ではなく「お菓子」と考える
  • 麺類ならそばがやや有利。ラーメン・うどん・パスタは野菜のトッピングを足す
  • 丼もの・カレー・麺類の単品はご飯が多く野菜が少ないので、頻度を減らすか小盛にする
  • いも・かぼちゃ・とうもろこし・れんこんは糖質が多いので、「野菜」ではなく「主食の仲間」として量を調整する

糖質制限はしたほうがいい?

「糖質を減らすほど血糖は下がるのでは」と考える方は多く、実際、1食の糖質を20〜40g程度に抑える「緩やかな糖質制限」は、日本人の2型糖尿病の方を対象とした研究でもHbA1cの改善が報告されており、ガイドラインでも選択肢の一つとされています。

ただし、極端な糖質制限(1日50g未満など)はおすすめしません。長期的な安全性が確認されていないこと、代わりに脂質やたんぱく質が増えて動脈硬化や腎臓への負担が懸念されること、そしてSGLT2阻害薬を飲んでいる方では「ケトアシドーシス」という危険な状態を招くことがあるためです。インスリンやSU薬を使っている方は低血糖の危険もあります。糖質を大きく減らしたいときは、必ず主治医に相談してください。

「ご飯を半分にして、おかずを倍にする」というやり方も要注意です。おかずの脂質と塩分が増え、カロリーはかえって増えてしまうことがよくあります。

6. 野菜・きのこ・海藻——1日350g、食物繊維20g以上を目標に

野菜・きのこ・海藻は、食事療法の主役といってよい食材です。食物繊維が糖質の吸収を緩やかにするだけでなく、満腹感を高めて食べすぎを防ぎ、便通や腸内環境を整え、LDLコレステロールを下げる働きもあります。ガイドラインでは食物繊維を1日20g以上、厚生労働省の「健康日本21」では野菜を1日350gとることが目標とされています。

350gというと多く感じますが、小鉢(約70g)で5皿分、つまり毎食1〜2皿の野菜料理を添えれば届く量です。加熱すればかさが減るので、おひたし、野菜炒め、具だくさんのみそ汁や鍋ものが有効です。

  • 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー、にんじん、トマトなど)を120g、淡色野菜(キャベツ、白菜、大根、玉ねぎなど)を230gが目安
  • きのこ・海藻・こんにゃくはほぼカロリーゼロで食物繊維が豊富。かさ増しに最適
  • 大豆(納豆、豆腐、煮豆)は食物繊維とたんぱく質の両方がとれる
  • 野菜ジュースは食物繊維が少なく糖分が多いため、野菜の代わりにはなりません
  • ドレッシングやマヨネーズの油に注意。ノンオイルタイプにするか、量を決めて使う

7. 食べる順番と食べ方——「野菜 → たんぱく質 → 主食」、20分以上かけて

同じ献立でも、食べる順番を変えるだけで食後の血糖の上がり方は変わります。日本の2型糖尿病の方を対象にした研究で、野菜を先に食べてからご飯を食べると食後血糖の上昇が緩やかになり、長期的にはHbA1cの改善にもつながることが示されています。肉や魚などのたんぱく質を先に食べると、インスリンの分泌を助けるホルモン(GLP-1)が増え、胃から腸への食べ物の移動がゆっくりになることも分かっています。

食べる順番:1番目に野菜・きのこ・海藻・汁物、2番目に肉・魚・卵・大豆、3番目にご飯・パン・麺。ひと口20〜30回噛み、20分以上かけて食べる食べる順番は「野菜 → たんぱく質 → 主食」1野菜・きのこ・海藻汁物・サラダ・小鉢から2肉・魚・卵・大豆主菜(たんぱく質)3ご飯・パン・麺主食(炭水化物)は最後にひと口20〜30回噛み、1食に20分以上かける(早食いは血糖が急上昇)
図5:食べる順番と食べ方のコツ

今日からできる食べ方の工夫

  • 食事の最初の5分は、サラダ・小鉢・汁物の野菜から食べる
  • 次に主菜(肉・魚・卵・大豆)、ご飯は最後に食べ始める
  • ひと口20〜30回噛み、ときどき箸を置く。1食に20分以上かける(早食いは肥満と糖尿病のリスクを高めます)
  • 1日3食、なるべく決まった時間に。朝食を抜くと、昼食後の血糖がかえって上がりやすくなります
  • 夜遅い食事は翌朝の血糖を上げます。夕食が21時を過ぎそうなときは、夕方におにぎりなど主食だけ先に食べ、帰宅後はおかずだけにする「分食」が有効です

8. 主菜(たんぱく質)と脂質の「質」を選ぶ

たんぱく質は筋肉を保ち、満腹感を持続させる大切な栄養素です。目安は目標体重1kgあたり1.0〜1.2g(60kgの方で60〜70g)で、毎食「手のひら1枚分」の主菜をとれば届きます。魚1切れ、肉80〜100g、卵1個、豆腐半丁、納豆1パックが、それぞれ1食分の目安です。

選び方の優先順位

積極的にとりたいほどほどに控えめに
魚(特にさば・いわし・さんまなどの青魚)、大豆製品(豆腐・納豆・厚揚げ)、鶏むね肉・ささみ、卵赤身の牛肉・豚肉、牛乳・ヨーグルト・チーズ脂身の多い肉、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉、揚げ物

脂質は「量」だけでなく「質」が重要です。バター・ラード・肉の脂身・生クリームに多い飽和脂肪酸を減らし、魚・オリーブ油・菜種油・ナッツに多い不飽和脂肪酸に置き換えましょう。マーガリンやショートニング、菓子パン、スナック菓子に含まれるトランス脂肪酸はできるだけ避けます。揚げ物は週1〜2回までが目安です。

循環器内科医の視点

糖尿病の方にとって脂質の質は、コレステロールと動脈硬化に直結します。青魚のEPA・DHAは中性脂肪を下げ、血管を守る働きがあり、週2〜3回以上の魚料理をおすすめしています。一方、腎臓の機能が低下している方(糖尿病性腎症の進んだ段階)では、たんぱく質の量を調整する必要が出てきます。自己判断で増やしたり減らしたりせず、検査結果をもとに主治医と相談してください。

9. 飲み物・間食・果物・お酒との付き合い方

飲み物——最初に見直すべき、最大のポイント

食事療法で最も効果が大きく、今日から始められるのが「甘い飲み物をやめる」ことです。液体の糖は吸収が速く、食後血糖を急上昇させます。清涼飲料を毎日飲み続けて急激に血糖が悪化する「ペットボトル症候群」は、若い方にも起こります。

飲み物に含まれる砂糖の量(角砂糖1個を約4gとして換算):コーラ500mLで約14個、スポーツドリンク500mLで約8個、加糖の缶コーヒーで約3〜4個、100%オレンジジュース200mLで約5個飲み物に含まれる砂糖の量(角砂糖1個≒4gで換算)COLAコーラ500mLSPORTSスポーツドリンク500mLCOFFEE加糖の缶コーヒー185g100%果汁ジュース200mL約14個糖類 約55g約8個糖類 約30g約3〜4個糖類 約12〜16g約5個糖類 約20g※製品により異なります。栄養成分表示の「炭水化物」「糖類」の欄を確認しましょう。無糖のお茶・水・炭酸水・ブラックコーヒーなら角砂糖0個です。
図6:飲み物に含まれる砂糖の量(角砂糖1個≒4g換算。製品により異なります)
  • 水・お茶・無糖の炭酸水・ブラックコーヒー・無糖の紅茶に切り替える
  • 「微糖」「カロリーオフ」「野菜ジュース」「乳酸菌飲料」「スポーツドリンク」も糖分を含むので注意
  • 人工甘味料入りのゼロカロリー飲料は血糖を直接は上げませんが、甘い味への依存が続きやすいため、「やめるまでのつなぎ」として使い、徐々に減らすのがおすすめです

果物——1日1単位(80kcal)まで

果物にはビタミン・食物繊維・カリウムが含まれ、適量なら体によい食品です。ただし果糖やブドウ糖も多く含むため、1日1単位(80kcal)程度を目安にします。みかんなら2個、りんごなら半分、バナナなら1本、キウイなら1〜2個、ぶどうなら10〜15粒です。活動量の多い朝〜昼にとり、夜は控えめに。果汁ジュース・ドライフルーツ・缶詰は糖分が濃縮されているので避けましょう。

間食——基本は「なし」、食べるなら1日80〜100kcalまで

間食は血糖を高いまま保ち、体重を増やす原因になります。基本は3食以外に食べないことですが、空腹がつらいときは次のようなものを1日80〜100kcalまで、できれば午後3時ごろまでにとりましょう。

  • 素焼きナッツひとつかみ(約25g)、無糖ヨーグルト、チーズ1個、ゆで卵、枝豆、高カカオチョコレート1〜2かけ
  • 「糖質オフ」のお菓子も、量が増えれば意味がありません。パッケージの炭水化物量を確認する習慣を
  • 夕食後の間食は、翌朝の血糖まで引き上げます。夜は無糖の飲み物で区切りをつけましょう

お酒——1日20〜25gまで、週2日は休肝日

糖尿病があっても、血糖のコントロールが安定していれば、適量の飲酒は可能です。目安は純アルコールで1日20〜25g程度——ビール中瓶1本(500mL)、日本酒1合、ワイングラス2杯、焼酎(25度)0.6合、ウイスキーダブル1杯のいずれかです。週に2日は飲まない日をつくりましょう。

  • アルコール自体が1gあたり7kcalと高カロリー。飲む日は主食を少し減らす
  • 甘いカクテル・チューハイ・梅酒や、糖質の多い日本酒・ビールより、焼酎・ウイスキー・ハイボール・糖質ゼロビールのほうが血糖への影響は小さい
  • おつまみは揚げ物より、枝豆・冷奴・刺身・焼き鳥(塩)・野菜スティックを
  • インスリンやSU薬を使っている方は、空腹時の飲酒や深酒で翌朝まで低血糖が続くことがあります。必ず食事と一緒に、量を守って

10. 塩分——血圧と腎臓を守るために1日6g未満

糖尿病の方の多くは高血圧を合併しており、塩分のとりすぎは血圧を上げて腎症や心血管病を進めます。高血圧のある方は1日6g未満、ない方でも男性7.5g未満・女性6.5g未満が目標です。日本人の平均摂取量は約10gなので、意識しないと届きません。

  • 汁物は1日1杯まで。麺類のスープは残す(ラーメン1杯はスープまで飲むと5〜8gの塩分)
  • 漬物・干物・練り物・加工肉・インスタント食品を減らす
  • しょうゆやソースは「かける」より「つける」。だし・酢・レモン・香辛料・香味野菜で味に変化を
  • 外食・コンビニでは栄養成分表示の「食塩相当量」を確認(1食2g台が目安)

減塩と減糖は、別々の努力ではありません。加工食品や外食の頻度を減らせば、塩分と糖分は同時に減っていきます。

11. 外食・コンビニ・忙しい方の実践テクニック

毎食自炊できる方ばかりではありません。外食やコンビニでも、選び方のコツを知っていれば食事療法は十分に続けられます。

外食の選び方

おすすめ避けたい・工夫したい
定食(焼き魚定食、生姜焼き定食、刺身定食など)丼もの・カレー・パスタ・ラーメンの単品
焼く・蒸す・煮る料理揚げ物中心の定食(とんかつ・天丼・唐揚げ)
ご飯は「少なめ」「小盛」で注文し、サラダや小鉢を追加麺の大盛り・替え玉、ご飯のおかわり
麺類のスープは残すドリンクバーの甘い飲み物、食後のデザート
ファストフードはセットのポテトをサラダに、ドリンクは無糖にセットの「ポテト+甘い炭酸飲料」

コンビニの組み合わせ方

コンビニでは「主食1つ+主菜1つ+副菜1つ+無糖の飲み物」の組み合わせを基本にします。

  • 主食:おにぎり1個(鮭・昆布・梅など)、もち麦入りおにぎり、全粒粉やブランのパン1個
  • 主菜:サラダチキン、焼き魚、ゆで卵、豆腐、納豆、おでん(卵・大根・こんにゃく)
  • 副菜:サラダ、カット野菜、海藻サラダ、枝豆、ひじき煮、きんぴら
  • 栄養成分表示の目安:1食で炭水化物40〜60g、食塩2g前後
  • 麺類やパスタは単品にせず、必ずサラダやゆで卵を足す

お弁当を選ぶなら、容積で主食3:主菜1:副菜2になっているものが理想です。揚げ物中心の弁当より、幕の内弁当のように品数の多いものを選びましょう。

12. よくある誤解Q&A

Q糖尿病の食事は、特別な「病人食」ですか?

Aいいえ。適正な量とバランスを毎日続けるだけで、糖尿病でない方にもおすすめできる健康食です。ご家族と同じ献立で、ご飯の量だけ調整すれば十分です。

Qご飯を完全に抜けば、血糖は上がりませんか?

A一時的には下がりますが、おかずの脂質・塩分が増えたり、筋肉が減ったり、反動で過食につながったりします。SGLT2阻害薬を飲んでいる方では危険な場合もあります。「抜く」ではなく「量を決める」が基本です。

Q玄米や全粒粉パンなら、量を気にしなくてよいですか?

A糖質の量は白米や食パンとほぼ同じです。血糖の上がり方は緩やかになりますが、量が増えれば血糖は上がります。

Q「糖質ゼロ」「糖質オフ」の表示があれば安心ですか?

A「糖質ゼロ」は一般に100gあたり0.5g未満を指しますが、「糖質オフ」「糖質控えめ」は「何と比べてどれだけ減らしたか」がメーカーごとに異なります。必ず栄養成分表示で炭水化物(糖質)の量を確認してください。

Q果物は体にいいので、たくさん食べてもよいですか?

A果物の糖(果糖・ブドウ糖)も血糖と中性脂肪を上げます。1日1単位(80kcal)が目安です。

Qトクホのお茶やサプリメントで血糖は下がりますか?

A食後血糖の上昇をわずかに抑える程度で、食事療法の代わりにはなりません。「飲んでいるから安心」と食事が緩むほうが問題です。

Q薬を飲んでいれば、食事は気にしなくてよいですか?

A薬は食事の土台の上で効果を発揮します。なお、GLP-1受容体作動薬で食欲が落ちている方は、たんぱく質と水分が不足しないよう注意が必要です。

Q低血糖が心配です。間食をしたほうがよいですか?

A低血糖が起こりやすいのは、インスリンとSU薬を使っている方です。それ以外の薬では、食事を抜かない限り低血糖はほとんど起こりません。予防のための間食が必要かどうかは薬の種類によって異なるので、主治医に確認してください。冷や汗・動悸・手の震えなどの低血糖症状が出たら、ブドウ糖10gか砂糖20g(または糖分を含むジュース150〜200mL)をすぐにとってください(α-グルコシダーゼ阻害薬を飲んでいる方は必ずブドウ糖で)。

13. 無理なく続けるための5つのコツ

  1. 完璧を目指さず「8割」でOK:週1〜2回の外食やご馳走は想定内。翌日から戻せば問題ありません。
  2. 「やめる」より「置き換える」:甘い飲み物→無糖、白米→麦ごはん、菓子→ナッツ。我慢が少ないほど続きます。
  3. 優先順位をつけて、2週間に1つずつ変える:①甘い飲み物をやめる ②野菜を先に食べる ③主食の量を決める ④間食を見直す ⑤お酒の量を決める。一度に全部変えようとすると続きません。
  4. 記録する:食事をスマホで撮影し、体重を毎朝同じ条件(起床後・トイレ後)で測ります。体重が1〜2kg減るだけで血糖は変わります。
  5. 一人で抱えない:ご家族と同じ献立にする、診察時に食事の写真を見せる。HbA1cは過去1〜2か月の血糖の平均を反映するので、食事を変えて2〜3か月後の検査で効果を確認しましょう。

14. 食事療法だけで足りる?薬が必要になる目安と受診の目安

2型糖尿病で合併症がなく、HbA1cが7%台前半までの方は、まず食事・運動療法を2〜3か月しっかり行い、その効果を見てから薬を検討するのが一般的です。一方、次のような場合は、食事療法と並行して早めに薬を使ったほうがよいことがあります。

  • HbA1cが8%以上、または口の渇き・多飲・多尿・体重減少などの症状がある
  • やせ型で、食事を改善しても血糖が下がらない(インスリンの分泌が低下している可能性)
  • 腎症、心筋梗塞、心不全などの合併症がある(心臓・腎臓を守る効果が証明された薬を優先)

「薬を飲む=負け」ではありません。診断後の早い時期に良好なコントロールを達成した方ほど、10〜20年後の合併症が少ないことが分かっています(レガシー効果)。食事療法と薬は対立するものではなく、組み合わせることで互いの効果を高め合います。

健診の結果・状況対応の目安
HbA1c 6.5%以上、または空腹時血糖126mg/dL以上早めに内科を受診(糖尿病の可能性が高い)
HbA1c 6.0〜6.4%、空腹時血糖110〜125mg/dL食事・運動の見直しを始め、3〜6か月以内に再検査
口の渇き、多飲多尿、急な体重減少、傷が治りにくい症状があればすぐに受診
すでに治療中で、食事の方法に迷っている次回の診察で食事の写真や記録を持参して相談

15. 糖尿病の食事について相談したい方へ

ちねん内科クリニック(内科・循環器内科)

当院では、検査結果と普段の食事(スマホの写真で十分です)をもとに、一人ひとりの生活に合った現実的な目標を一緒に考えます。血糖だけでなく、血圧・コレステロール・腎機能をあわせて管理し、心臓と腎臓を10年先まで守ることを目標にしています。

健診で血糖やHbA1cを指摘された方、「糖尿病と言われたけれど、何から始めればよいか分からない」という方も、お気軽にご相談ください。

  • 所在地:埼玉県川口市安行吉岡
  • 診療時間:9:00〜13:00/15:00〜18:00
  • 休診日:金曜・土曜(日曜は午前のみ)
ご予約・アクセスはこちら

この記事の執筆者:知念 大悟(ちねん内科クリニック 院長)

循環器内科医。埼玉県川口市安行吉岡で内科・循環器内科のクリニックを開業し、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病と、睡眠時無呼吸症候群の診療を行っています。「血糖・血圧・コレステロールを整えて、心臓と腎臓を10年先まで守る」ことを診療の軸にしています。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。食事内容を大きく変えるときは、主治医にご相談ください。

参考文献
  1. 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024.
  2. 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版』文光堂, 2013.
  3. 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
  4. 厚生労働省『健康日本21(第三次)』
  5. 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
  6. 文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
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