本当に医学的に健康にいい食事はなんなのか? 〜地中海食・プラントベース・DASH食〜

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健康的な食生活をしてみたいんだけど、どんな食事がいいんだろう

地中海食などをお勧めします

この記事で分かること

・健康的な食事を見つける上での注意点

・地中海食の効果とそのエビデンス

・どんな食べ物が体にいい食べ物なのか

目次

健康的な食事かどうかはどう判断するか

健康診断で高血圧や糖尿病や高コレステロール血症を指摘されたり、そうでなくても将来病気にならないように、健康的な食事をしたいと考える人は多いです。


しかし健康的な食事をしようとしても、何が健康的な食事なのか判断するのは難しいです。
食べ物は大きなお金が絡むので、本当に健康にいいと証明されているものと、インターネットやテレビ体にいいと言われているものは必ずしも一致していません。


ここで、皆さんが情報を見極めるためのポイントがあります。

1. 個々の医師の経験ではなく、大規模な調査から導き出されていること

2. ガイドラインで推奨されていること

現代の医学はEBM(Evidence Based Medicine)と言って、エビデンスを元に組み立てられています。
全てがエビデンスで解決するわけではありませんが、エビデンスを無視して、個々の医者が患者を診てきてこうだったからこの食事が正しい、という時代ではありません。


何千人単位の人の食事を調査し、摂取しているものや食事パターンによって分析し、病気の発生率や死亡率に統計的な差があると証明されて初めて認められます。


また、一つの論文の結論だけでは決定的なエビデンスになることは少なく、他の研究でも同じような結果が出ることが確認されて、積み重なって初めて認められます。
ですので、「最新の研究で●●が死亡率を減らした」というニュースは日々ありますが、そういったニュースに流されず、何年も様々な研究がされて健康にいいと確定している情報を選びましょう。

見極める一つの方法として、ガイドラインに書いてあるかを確認するのが有効です。
ガイドラインも色々な企業から資金援助を受けていることがあり100%科学的データを反映はできませんが、それでも積み重なったエビデンスを無視することはできません。科学的に証明されて受け入れられていることが述べられています。
代表的なガイドラインに明記されている健康食は一般的に、エビデンスが積み重なっていると考えていいでしょう。

ガイドラインはなんと言っているか

ガイドラインを見ていく前に、そもそも健康的な食事の定義とはなんでしょう。
健康的な食事とは病気にならず、長生きを見込める食事のことです。
ではどんな病気が対象になるのでしょうか。ここで、日本人の死因をみてみます。

1位 悪性新生物(腫瘍)27.6%
2位 心疾患(高血圧性を除く)15.0%
3位 老衰 9.6%
4位 脳血管疾患 7.5%
5位 肺炎 5.7%
6位 誤嚥性肺炎 3.1%
7位 不慮の事故 2.8%

(令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況より引用)

上記の中で、心疾患や脳血管疾患を含めた循環器系の疾患は25.2%であり、悪性腫瘍(癌)と合わせると50%を超えます。
対応しようがない死因以外では大半を占めると言えます。
つまり、心血管疾患と癌の発生を抑える食事を探せばいいことになります。

健康な食事とは心血管疾患と癌を減らす食事


ではそれぞれの学会の食事に関するガイドラインをみてみましょう。

ACC(アメリカ心臓病学会)/AHA(アメリカ心臓協会)のガイドライン

心血管疾患のリスクを減らすために以下を推奨する

・野菜・果物・豆類・ナッツ・全粒穀物・魚の摂取を増やす。

・飽和脂肪酸を単価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸に置き換える

・塩分とコレステロールを含む食事を減らす

・加工肉・精製された炭水化物・清涼飲料水を最小限にする

・トランス脂肪酸の摂取を避ける


・食事のタイプとしては地中海食とプラントベースが推奨される

ASC (アメリカがん協会)のガイドライン

以下が健康的な食事に含まれる

・色々な種類の野菜。特に濃緑、赤、橙のものや、食物繊維の豊富な豆類など

・果物、特に様々な色の果物を加工してない形で摂取する

・全粒穀物

以下を減らすまたは摂取しないこと

・赤肉や加工肉

・砂糖の入った飲料水

・高度に加工された食品や精製された炭水化物

違いはありますが、どちらも似たようなことを言っています。
つまり、野菜・果物・全粒穀物・豆類を多く摂取し、加工肉・砂糖・精製された炭水化物を控えることです。

ちなみに、全粒穀物とは玄米やオートミールのように精製されていない穀物のことで、精製された炭水化物とは白米や小麦粉でできたパンなどのことです。
加工肉とはベーコン・ハム・ソーセージのような加工された肉です。

Good:野菜・果物・全粒穀物・豆類

Bad:加工肉(赤身肉)・砂糖・精製された炭水化物

地中海食とは何か

食べるべきそれぞれの食品のことは分かりましたが、もっと大きい括りで、食事パターンとなると何が推奨されているのでしょうか。それもガイドラインに明記されていて、心臓病だけでなく、高血圧や糖尿病や多くのガイドラインで地中海食が勧められています。

地中海食はとはギリシャ、イタリアやその他の地中海に接する国々の伝統的な食事です。

1950年代に地中海の国ではアメリカと比較して心臓病が少ないことが注目されるようになりました。それ以来、様々な研究が行われ、地中海食が心臓病と脳卒中を減らすことが確認されてきています。

では地中海食とはどういうレシピなのでしょうか。実は、これが地中海食という決まったものはありません。
上の図にあるピラミッドのように、植物を中心とした、果物・野菜・全粒穀物・豆類・ナッツなどを豊富に摂取し、オリーブオイルを脂質として多く摂取し、少量から中等量までのワインの摂取を許可します。そして、少量から中等量の魚・鳥類・乳製品を含み、赤肉は少なくします。

ガイドラインで推奨されている食事に良く似ていることに気づくと思います。

地中海食のエビデンス

地中海食では有名な大規模試験があります。
PREDIMED試験という7000人以上をランダム化し前向きに調べた大規模な試験では、一次予防に効果があるかをみています。一次予防とは、まだ病気になっていない人が、病気になることを防ぐことです。例えば糖尿病があり心筋梗塞になりやすいがまだなっていない人が、そのまま心筋梗塞にならずに予防できるか、ということです。


この研究では
①地中海食とエキストラバージンオリーブオイルを摂取する群(Med diet, EVOO)
②地中海食とナッツを摂取する群(Med diet, nuts)
③低脂肪の食事を行うコントロール群(Control diet)
の3群に分けて効果を比較しています。

N Engl J Med 2018; 378:e34より引用

上記のグラフで、縦軸が心筋梗塞・脳卒中・心臓死が起きた割合です。
4.8年間の観察期間で、地中海食はコントロール群と比較して31%(オリーブオイル群)と28%(ナッツ群)、心筋梗塞・脳卒中・心臓死の複合エンドポイントが少ないという結果でした。

PREDIMED試験は一次予防でしたが、二次予防はどうでしょうか。
二次予防とは、一度病気を起こした人が、再度起こさないようにすることです。


例えば一度心筋梗塞を起こした人は、起こりやすい要因があるため発症したので、2回目も起こりやすいです。それを食事の介入で防げるかをみた試験が、Lyon Diet Heart 試験です。
この試験で地中海食は、地中海食は心臓病の再発を50-70%減らしました。

Circulation. 1999;99:779–785より引用

プラントベース

ここまでで、地中海食がしっかりとしたエビデンスに基づき、医学的に推奨された食事であることが分かったと思います。
では、他には健康的な食事はないのでしょうか。


実は他にも推奨されている食事はあります。それはプラントベースです。
プラントベースは英語のPlant based dietからきており、動物性の食品を摂らず、植物のみから栄養をとります。
意味の違いはありますが、ベジタリアンに近いと考えておいてください。

まずエビデンスからみていきましょう。
PREDIMED試験でのサブ解析です。サブ解析とは、本来調べようとしたものより、もっと細かい項目や効果についてさらに解析を加えるものです。下のグラフがその結果です。

Circulation 1999;99(6):779-85より引用

PREDIMED試験の参加者の食事を点数づけし、果物・野菜・ナッツ・全粒穀物・豆類・オリーブオイル・ジャガイモは加点、卵・魚・乳製品・肉・添加された動物の脂肪は減点してグループ分けされました。
つまり、植物性のものは加点、動物性のものは減点しており、点数が高いほどプラントベースに近いということになります。


上の図のように、地中海食を摂取している中でも、よりプラントベースに近い食事(4・5)はプラントベースから離れている食事(1)より死亡率が少ないという結果でした。

プラントベースは、地中海食をより厳格にした食事であると言え、ガイドラインでもはっきり推奨されています。

【プラントベースの注意点】

プラントベースでまず大事なのが、しっかりとした知識を持って食事を取ることです。
究極の話、ポテトチップスだけとっていても、動物性食品が入っていなければプラントベースということはできますが、健康的な食事でないことは明らかです。
しっかりと、野菜・果物・全粒穀物・豆類を、なるべく加工食品ではない形でバランスよく取ることが大事です。

また、完全にプラントベースでの食事となると、不足する栄養素があるので補充が必要になります。
①ビタミンB12
②ビタミンD
③オメガ3脂肪酸

DASH食

もう一つ押さえておくべき健康食がDASH食です。これは主に高血圧のガイドラインで出てきますが、それだけではなく様々状況で実践する価値のある食事です。

DASH食とは、果物・野菜・豆・低脂肪乳製品を豊富に摂取し、スナック・お菓子・肉類・飽和脂肪酸をなるべく摂取しない食事です。DASH試験という高血圧に対する食事の効果をみた試験では、高血圧患者では血圧が11.4mmHg低下し、この効果は2週間で現れました。

乳製品を積極的に摂るか摂らないかの違いはありますが、DASH食もベースとなる健康的な食品は一緒ですね。

健康的な食事をする上での注意点

普段私は心臓病の患者さんや、高血圧・糖尿病・高脂血症の患者さんを診察していますが、実践できた方は本当に効果が目に見えて出ます。しかし、最初の数週間は続けられても、そのうち辞めてしまう人も多いです。

食事は2−3週間だけ続けても意味がなく、生活なの中に取り入れてずっと続けていかなければなりませんので、完璧主義にはならず、上記の知識を頭に入れながら少しでも良い食事になるように努力して続けていくことが大事です。

この記事のまとめ

・健康的な食事は野菜・果物・豆類・全粒穀物を豊富に含み、加工肉や砂糖や精製された炭水化物を減らす

・地中海食は心血管イベントやその他の病気を減らすエビデンスが豊富な健康食

・続けられるように日常生活に取りいれることが大事

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この記事を書いた人

川口市安行吉岡で内科・循環器内科・糖尿病内科・呼吸器内科の診療を行っております。

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