高尿酸血症と痛風発作 〜尿酸値が高いと言われたら気をつけること〜

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健康診断で尿酸値が高い(高尿酸血症)と言われる人はかなりいます。2010年のデータでは成人男性の20-25%は高尿酸血症と診断されています。尿酸値が高くても自覚症状を認めないことも多いですが、高尿酸血症は何が問題なのでしょうか。

この記事では、尿酸が高いことで起こる痛風やその他の合併症、また尿酸を下げるためにすべき食生活や薬物療法などについて解説していきます。

この記事を読んでわかること

・尿酸が高いことの問題点

・痛風発作の特徴と治療法

・尿酸値を下げる生活習慣と薬物治療

目次

尿酸値はいくつからが高値なのか

高尿酸血症は尿酸値が7.0mg/dLを超えたときに診断されます。

尿酸値が高い理由は、尿酸産生亢進をきたす遺伝子変異など遺伝的な要因もありますが、食事・運動・飲酒などの生活習慣の影響の方が大きいと言われています。

食事の欧米化に伴い、高尿酸血症と診断される人は増加の一途を辿っています。

文献1より引用

尿酸値が高いと何が問題か

尿酸値が高いことに注意する理由は2つあります

① 生活習慣病のリスクが高くなる

② 痛風発作を起こすことがある

①に関してですが、高尿酸血症は高血圧・糖尿病・慢性腎臓病・脳卒中・心臓病・メタボリックシンドロームの合併が多く、これらの病態の予測因子や危険因子となる可能性が高く注意が必要です。

つまり、尿酸値が高い=その他の重大な生活習慣病を合併していないか検索が必要ということになります。

次に②の痛風発作について説明します。

痛風発作

痛風発作とは

痛風発作は、正確には痛風関節炎と言い、尿酸の結晶が関節に析出することによって起きる炎症です。

生体においては通常の条件下では尿酸は7.0mg/dL以下までは溶解すると考えられるため、この値を超えると痛風のリスクが高まります。

痛風発作は極めて強い痛みがあり、「息を吹きかけるだけで激痛」と表現されます。
実際、発作が起きた日に病院に行きたくても歩けないため受診できないという人もいます。

痛風発作の特徴は以下があります
1. 中年男性に好発
2. 24時間以内にピークに達する急性の単関節炎
3. 下肢関節の罹患(特に足の親指の付け根の関節)
4. 10日ほどで自然に軽快
5. 背景に高尿酸血症
6. 無治療なら次第に発作が頻発・慢性化する

発作は、起きやすい部位が決まっており、最も起きやすいのは足の親指の付け根です。
他にも膝など色々な場所に起こりますが、基本的には単関節炎と言って、一つの関節に起こることが多いです。

痛風発作が起きたらすべきこと

何もしなくても10日ほどで自然軽快はしますが、生活が制限されますし痛みが強いので、薬物療法の対象となります。使う薬物には3種類あります。

① NSAID
② 副腎皮質ステロイド
③ コルヒチン

① NSAID
一般的に最も使われるのはNSAIDです。NSAIDというのは、非ステロイド性抗炎症薬のことで、市販薬で言えばロキソニンやイブなどと同じ種類の薬です。

ただし、痛風発作で使用する際には最初に多量のNSAIDを内服して炎症を抑え込む、パルス療法というものが行われます。

ほとんどのNSAIDは痛風の用量での保険適応が通っていないので、適切な用量で使えるNSAIDは限られます。痛風用量で使える薬の一例としてはナイキサンという薬があります。

② 副腎皮質ステロイド
副腎皮質ステロイドとは、腎臓の上にある副腎という組織から出るホルモンで、これを治療に用いることで炎症を抑えたり体の免疫力を抑制する作用があり、様々な疾患に使われます。

痛風発作にも効果があり、NSAIDによって胃潰瘍を起こすリスクが高かったり、抗凝固薬という血をサラサラにする薬を内服していたり、腎臓が悪い人にはこちらが使われることがあります。

③ コルヒチン
コルヒチンも炎症を抑える薬で、古くから痛風発作に使用されてきました。
痛風の発作時の治療にも使えますし、他にも痛風の予兆があるときに頓挫させたいときや、尿酸低下薬使用時に発作予防目的に使用されることもあります。

上記の3つのどれが効果が高いかに関してはっきりとしたデータはなく、年齢や併存疾患や他の飲んでいる薬、医者がどれに使い慣れているかなどで選択されます。

その他の注意点

痛風発作時は患部を安静にして、冷却するようにしましょう。

また、痛風は尿酸値が高くて起こりますが、痛風発作の最中に尿酸値を下げると発作が起こりやすくなるので、一般的には尿酸値を下げる薬を痛風の発作時には開始しません(既に内服している人はそのまま継続します)。

尿酸値を下げるための食生活

尿酸が高いのは遺伝とも関連しますが、遺伝より環境要因の方が影響が大きいです。根本的な原因が生活習慣の乱れであり、その乱れが尿酸値だけでなく高血圧など他の疾患にもつながる以上、生活習慣を改善することは極めて重要です。

尿酸値を上げる食生活として、肉類や魚介類や内臓類の摂取、飲酒、激しい筋肉運動、清涼飲料水など果糖の摂取、ストレス、肥満などがあります。

食事

【アルコール】
アルコール摂取の増加と尿酸値の増加は強く関連します。アルコールは代謝の際に肝臓でATPを消費し、内因性プリン体分解を亢進するので尿酸値を上げます。
特にビールは酵母や麦芽由来のプリン体を多く含むのでお酒で最もリスクが高く、ビール350mLあたり痛風発作のリスクが1.5倍になります。

【肉類・魚介類・内臓類】
プリン体が多く含まれる食品を多く取ると尿酸値は上がります。プリン体は細胞分裂が活発な組織に多く含まれています。
具体的には肉類や魚介類の摂取で尿酸値が上昇するため、注意が必要です。肉類摂取が多いと1.4倍、魚介類摂取が多いと1.5倍痛風発作のリスクが高いというデータがあります。

【ソフトドリンク】
他にも、ソフトドリンクは1.9倍痛風のリスクを上げ、これは果糖摂取によるものです。

× 肉類・魚介類・酒・ソフトドリンク

逆に、尿酸値を下げる可能性がある食品として、コーヒー・チェリー・ビタミンC・乳製品(特に低脂肪)があげられます。これらは痛風を低下させる報告があり、例えば乳製品摂取が多いと痛風リスクが40%減ったというデータがあります。

また、推奨される食事パターンとしては、地中海食やDASH食などがあり、両者とも尿酸値が低下します (地中海食・DASH食に関する説明はこちら)

○ 地中海食・DASH食・コーヒー・チェリー・乳製品

運動や減量

肥満がある人は減量をすることが勧められます。

また、有酸素運動は尿酸値を低下させますが、激しい筋肉運動はATPを消費し尿酸値を上昇させるので注意が必要です。

薬物治療

薬物療法の適応となるのは、以下です。ただし、いずれも上記の生活指導を行なった上で行います。

尿酸値≧7.0mg/dLで痛風発作が起きた人
尿酸値≧8.0mg/dLで合併症がある人
尿酸値≧9.0mg/dLの人

薬物療法には、尿酸の産生を抑える薬物と、尿からの排出を亢進させる薬物があります。

24時間の尿から尿酸の排泄を測定して、病態にあった薬を選択する方法もありますが、それによって結果が改善するというエビデンスはありません。よって、使いやすい尿酸産生抑制薬から使用するのが一般的です。

薬物を使用時の尿酸の目標値は≦6.0mg/dLです。注意点として、尿酸値が急激に低下するときに痛風発作が起きやすいので、最小用量から開始し徐々に増量していくのが一般的です。また、発作が起きないように上記のコルヒチン少量を3〜6ヶ月ほど併用することもあります。

薬の種類

【尿酸生成抑制薬】
アロプリノール (ザイロリック)
フェブキソスタット(フェブリク)
トピロキソスタット(トピロリック)

【尿酸排泄促進薬】
ベンズブロマロン (ユリノーム)
プロベネシド (ベネシッド)

薬物治療は尿酸生成抑制薬から使うことが多いですが、基本的には昔からある薬であるアロプリノールの使用を勧めるガイドラインが多いです。

使いやすさの点ではフェブキソスタットの方が上ですが、フェブキソスタットは2017年のCARES試験というアメリカの研究で、フェブキソスタットを内服している患者はアロプリノール内服患者より心血管イベントの発生が多かったという結果を受け、FDAや厚労省からも注意喚起が出されており心臓病がある人などは注意が必要です(ただしその後の報告では差がなかったというヨーロッパの研究の報告もあります)。

薬物療法はそれぞれの人の検査結果や他の薬との飲み合わせを考慮して処方されていますので、決して自己判断せずかかりつけ医の指示に従ってください。

この記事のまとめ
・尿酸高値は他の合併症のサインかも

・痛風発作を起こすことがあり要注意


・尿酸を低下させる食生活を理解する


・痛風歴や尿酸値によっては薬物療法が必要となる

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この記事を書いた人

川口市安行吉岡で内科・循環器内科・糖尿病内科・呼吸器内科の診療を行っております。

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