高齢な方がある日突然、左右対称で肩などの強い痛みやこわばりを感じた時は、リウマチ性多発筋痛症を考えます。
内科で診断・治療を行う疾患ですが、「腕が上がらない」という訴えから、整形外科の疾患だと思われ、内科で見逃され、診断まで時間がかかってしまうことも多い疾患です。
この記事ではリウマチ性多発筋痛症の特徴や治療法について説明します。
どのような人がかかる?
リウマチ性多発筋痛症は高齢者に発症する疾患で、ほとんどは50歳以上の方に起こり、年齢が上がるとともに発症率が高くなります。発症のピークは70−80歳です。
頻度的には比較的よくみる疾患で、海外の報告では生涯で発症する確率は女性で2.4%、男性で1.7%と言われています(ただしアジア人は白人より頻度は少ないです)。女性は男性の2倍程度発症しやすいです。
この病気が発症する詳しい原因に関しては今のところわかっていません。
どのような症状が出る?
左右対称性の、肩・腰・首・臀部・大腿などの、四肢近位部の痛みとこわばりが特徴で、朝一番の症状が最も強いです。朝のこわばりがないならこの疾患ではない可能性が高いです。午後には痛みが和らぎますが、長時間の運転など、動かない時間が長いとこわばりが再度出現します。
患者さんは筋肉が痛いと訴えますが、実は筋肉自体に問題はなく、滑膜や腱に炎症があり、痛みにつながっています。
発症は突然で、一晩にして起こったと感じる人が多いです。「ずっと昔からある症状」の場合はこの疾患ではありません。
「肩が上がらなくなった」「朝、痛くて自分で起き上がれなくなった」「痛みで夜眠れない」と症状を訴えます。
特に両肩の痛みはほとんどの患者さんに出現する症状で、両腕が90°より上に外転できないのは特徴的です。首や腰の痛みも多くの患者さんに出現します。
手首や手の関節、膝にも軽度の症状が出ることがありますが、足首や足には一般的に症状は出ません。
倦怠感や食欲がなくなったり、微熱が出るなどの全身の症状が出現することもありますが、高熱が出ることは稀です。もし高熱が出たら次に説明する巨細胞性血管炎や、別の感染症がないかのチェックが必要です。
気をつける合併症は?
リウマチ性多発筋痛症の患者さんの10%に、巨細胞性血管炎という病気が合併するので注意が必要です。逆に、巨細胞性血管炎の患者さんでは50%にリウマチ性多発筋痛症を合併と、かなり高確率で合併しており、同じ病気が違う表現で発症しているかもしれないと言われています。
この疾患は側頭動脈(こめかみの動脈)や眼動脈に炎症を起こす疾患で、側頭部がズキズキ痛んだり、視力が低下したり、噛んだ時の顎の痛みが出ます。
この疾患が合併している場合は治療で使う薬の量が変わってくるため、注意が必要です。
必要な検査は?
血液検査で炎症反応をみることが必要です。CRPや赤血球沈降速度と呼ばれる炎症マーカーが上昇していることを確認します。もしCRPが上昇していなければこの疾患は否定的です。
画像検査は必須ではありませんが、PET検査と呼ばれる炎症を調べる検査をすると、肩など痛む部分に炎症を認めます。
どうやって診断する?
診断では、問診や身体所見が最も重要となります。四肢近位部の痛みやこわばりがいつから現れたのか、左右対称なのかなどをチェックし、肩・首・腰の可動域の低下を確認します。そして血液検査で炎症反応が上昇していることを確認し、必要があれば画像検査も行います。
確立した診断基準というものはありませんが、以下の4つ全てを満たした場合は経験的にリウマチ性多発筋痛症と診断します
1. 50歳以上
2. 両肩and/or腰の痛みが2週間以上続く
3. CRPや赤血球沈降速度が上昇
4. 低量ステロイドで急速に症状が改善する
どのような治療を行う?
治療は副腎皮質ステロイドという薬を少量(10〜20mg)使用します。これは炎症を抑えたり体の免疫力を抑制する薬であり、様々な疾患に使われます。
一般的には上記の診断基準にもあるように、副腎皮質ステロイドに速やかに反応し、それまでどの痛み止めも効かなかった痛みが、すぐに消失することが多いです。
ステロイドは症状が安定したら徐々に減量し、通常は1−2年で終了できますが、それより長く続くこともあります。
注意点として、この疾患は再発しやすいので、薬を減量している間に症状がぶり返すことも決して稀ではありません。
いかがだったでしょうか。リウマチ性多発筋痛症は痛みで生活の質が低下する病気ですが、ステロイドの治療には速やかに反応することが多く、またこれによって命に関わる合併症や後遺症なども一般的にはありません。早期に診断をして、治療をすることが大事ですので、疑ったらすぐに医療機関を受診してください。