カルシウム拮抗薬とはどんな薬? 〜特徴・効果と副作用〜

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高血圧と診断されてカルシウム拮抗薬という種類の薬を処方されたけどどんな薬なんだろう・・・

この記事を読んで分かること

・薬の効果や対象となる疾患

・それぞれの薬の特徴と使い分け

・副作用とその対処法など

目次

カルシウム拮抗薬とは

カルシウム拮抗薬は、日本で最も処方されている降圧薬で、カルシウムブロッカーと呼ばれることもあります。

L型Caチャネルという血管や心臓に主に分布しているイオンチャネルに結合して、血管を拡張し血圧を低下させたり、心臓に働きかけ心拍数を落としたりします。

ガイドラインではACE阻害薬/ARB・サイアザイド系利尿薬と並んで、高血圧の第一選択薬の一つとなっています。

降圧薬としては、心筋梗塞などの病気を減らす強いエビデンスがあり1)、また脳卒中を減らす作用は他の降圧薬より強い可能性があります2)

カルシウム拮抗薬は医師にとっては使いやすい薬で、好んで処方する理由には
「キレが良く効果がすぐに現れる」
「腎機能を気にしなくていい」
などがあります。使ってはいけないというシチュエーションが少ないため、便利なのです。

これは、カルシウム拮抗薬は主に動脈を直接拡張させることで血圧を低下させるので、体液量を調整したり、体内の化学物質を調整する他の降圧薬より作用がシンプルなのが一因です。

その他にも、狭心症の治療薬としても一般的であり、また脈が速くなるタイプの不整脈にも頻繁に使用されたり、カルシウム拮抗薬は日常臨床になくてはならない薬です。

カルシウム拮抗薬は高血圧の第一選択薬。他にも狭心症・不整脈などに使用される

カルシウム拮抗薬の種類

カルシウム拮抗薬は主に、ジヒドロピリジン系非ジヒドロピリジン系に分かれます。

ジヒドロピリジン系

血管を拡張させる作用がメインで、心臓に対する作用は少なく、主に高血圧の治療に使用されます。

非ジヒドロピリジン系

血管拡張作用は弱いため高血圧で使われることは少ないですが、脈拍をゆっくりにしたり、心臓の収縮力を低下させるため、主に不整脈のコントロールに使うことが多いです。

ジヒドロピリジン系は高血圧治療に、非ジヒドロピリジン系は不整脈治療に使われることが多い

日本で一般的に使用されている代表的なカルシウム拮抗薬を表にしました。

ジヒドロピリジン系アムロジピン (ノルバスク)
ニフェジピン (アダラート)
シルニジピン (アテレック)
ベニジピン (コニール)
アゼルニジピン (カルブロック)
非ジヒドロピリジン系ベラパミル (ワソラン)
ジルチアゼム (ヘルベッサー)

カルシウム拮抗薬の効果と使い分け

では実際にカルシウム拮抗薬はどのくらい効くのでしょうか。
降圧薬は年齢や人種や個人差によって効き方が違うため、一概にどの薬の方が効くとは言えないのですが、一般的にカルシウム拮抗薬は降圧作用が高いという印象を持っている医師が多いと思います。すぐに効果も現れるため最初に使う医師が多いのです

次の疑問として、カルシウム拮抗薬の中でどの薬を使うのでしょう?

降圧剤として使うならば、それぞれの医師が使い慣れている薬剤を使うのが一般的ですが、アムロジピン(ノルバスク)が最も良く処方されています。

他にもT型やN型のカルシウムチャネルも阻害する薬は腎臓保護作用や、頻脈を防ぐ作用があるとも言われ、これらを有するアゼルニジピン(カルブロック)、シルニジピン(アテレック)、ベニジピン(コニール)などを好んで使う医師もいます。

また、冠攣縮性狭心症という、心臓の血管が痙攣するタイプの狭心症にはベニジピン(コニール)、ニフェジピン(アダラート)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)が良く使われるなど、疾患によっても変わってきます。


以下ではそれぞれの薬について簡単に説明をしていきます。

アムロジピン (ノルバスク)

最も使われている代表的なカルシウム拮抗薬です。
血中半減期が長いため、1日を通じて安定した降圧作用を得られます。
最もバランスがよく処方しやすい薬です。

ニフェジピン (アダラート)

アムロジピンに次いで多く処方されている、歴史のある薬です。

昔は徐放剤がなかったため、急激に効き血圧が低下して脳梗塞が増えたり、薬が切れる時に心筋梗塞が増える可能性を指摘されました。しかし現在はアダラートLという徐放剤、さらにアダラートCRという外層部と内核錠がありさらにゆっくり放出される薬があり、多く使用されています。

アダラートの最大量である80mgは、カルシウム拮抗薬の中で最も降圧作用が強いと考えられます。
ただし、高用量で使用した場合は浮腫や顔面紅潮などの副作用が出やすいので注意です。


冠攣縮性狭心症では第一選択薬として使われることも多い薬です。

アゼルニジピン (カルブロック)

T型カルシウムチャネルもブロックする。T型チャネルは腎臓に分布しており、腎臓を保護する作用があると言われている。
ただし、降圧作用に関してはアムロジピンやニフェジピンと比較するとマイルドという意見があります。

シルニジピン (アテレック)

N型カルシウムチャネルも遮断することで、交感神経末端からのノルアドレナリンの放出を抑える作用も併せ持つ。これによりカルシウム拮抗薬による心拍数の上昇など心臓への悪影響を減らせる可能性があリます。

また、日本で行われたCARTER試験では、腎保護作用が他のカルシウム拮抗薬より優れる可能性が示唆されています3)

他にも、脚のむくみの副作用を起こしにくいと言われており、他の薬からの切り替えでむくみが改善したという報告もあります。(脚のむくみの副作用は後ほど詳しく説明します)


この薬も降圧作用に関してはマイルドという意見が多いです。

ベニジピン (コニール)

T型とN型のカルシウムチャネルもブロックします。

冠攣縮性狭心症に良く使われています。

ベラパミル (ワソラン)

心拍数を抑える効果が高いので、脈が速くなるタイプの不整脈 (心房細動など)に良く使われます。定期的に飲む場合は1日3回ですが、動悸がした時だけ頓服で飲む方法もよく使われます。

ジルチアゼム (ヘルベッサー)

ベラパミルと似ていて、心拍数を抑える作用があります。徐放剤があるため1日1回の投与で済む剤型があるのが便利です。

また、冠攣縮性狭心症の第一選択薬としても良く使われます。

それぞれの薬の説明をしましたが、大事なのはどの薬を使うかではなく、しっかり血圧を下げることです。
血圧を下げることによる臓器の保護効果は、それぞれの薬の違いよりずっと大きいです。

カルシウム拮抗薬の副作用

副作用は重篤なものは極めて少ないですが、ジヒドロピリジン系の副作用には頭痛、頭がくらくらする、顔がほてる、歯肉が腫れる、脚がむくむなどが20-30%で生じます。特に脚のむくみ(下腿浮腫)の原因がカルシウム拮抗薬であることが気付かれにくいため注意が必要です。

非ジヒドロピリジン系では便秘が起こることがあります。また、脈や心臓の収縮を抑える目的で使われますが、効きすぎることで脈が遅くなりすぎたり、心不全を来たすことがあります。心臓の機能が悪い方や、脈が遅い方は注意が必要です。

いずれの副作用も用量が増えるほど起こりやすく、副作用が出た際には用量を減らすことで改善する可能性があります。

カルシウム拮抗薬の副作用は頭痛、ほてり、下腿浮腫、便秘など。用量が増えるほど副作用も出やすい

下腿浮腫

下腿浮腫は重要な副作用なので追加で説明します。

下腿浮腫はジヒドロピリジン系で起こりやすく、特に多く処方されているアムロジピンニフェジピンで報告が多いです。高用量では低用量の2-3倍の頻度で起こります。

起こる頻度は報告によってまちまちですが、メタアナリシスを行なった論文では、内服開始後約半年での下腿浮腫の発症率は10.7%となっています4)

機序としては、動脈が拡張するので、静脈との間をつなぐ毛細血管へ流れ込む血液量が増え、そこから間質というむくみが起こる場所に体液が漏れ出ることによります。ある研究ではカルシウム拮抗薬の一つであるニフェジピンを内服するとすぐに下肢の体積が増加しました5)

盲点として、内服を開始してすぐに起こるとは限らず、半年以上経過してからむくみが出てくることもあることです4)。このため、カルシウム拮抗薬がむくみの原因になっていることが見逃されやすいです。

J Hypertens. 2011;29:1270-1280より引用

上記の図の薄い方の棒グラフが下腿浮腫の発症率で、6か月以降になっても増加しているのが分かります。濃い方の棒グラフは下腿浮腫によりカルシウム拮抗薬の内服を中断した患者さんの割合です。

患者さんも「この薬は前から飲んでるから関係ないよ」とご自身でおっしゃることも多いですが、そうとも言い切れないのです。

カルシウム拮抗薬の下腿浮腫は開始してから半年以上経ってから生じることもあるため原因として見逃されやすい


ではカルシウム拮抗薬による脚のむくみが出たらどうすればいいのでしょうか?
対処法は下記があります

1. 用量を減らす
2. 非ジヒドロピリジン系に変更する
3. ACE阻害薬/ARBを加える

1.降圧薬の降圧作用は低用量で最大の効果があり、そこから増量していっても降圧作用は緩やかにしか増えません。一方、副作用は薬の用量に比例して増加していきます。ですので、降圧薬を減量して様子を見るのは現実的な方法です。

2. 非ジヒドロピリジン系に変更することでむくみが改善することがあります。ただ、降圧作用はジヒドロピリジン系より弱いので血圧コントロールの面から難しいことも多いです。

3. ACE阻害薬やARBという降圧薬はカルシウム拮抗薬と並ぶ高血圧の第一選択です。これらは静脈の拡張作用があり、毛細血管の圧を下げるのでむくみを減らす作用があります。
海外のメタアナリシスでは、カルシウム拮抗薬+ACE阻害薬/ARBは、カルシウム拮抗薬単剤より下腿浮腫が38%少ないという結果でした6)

実際、原因不明の下腿浮腫と言われている人ではカルシウム拮抗薬を飲んでいる人も多く、上記の方法によって1週間後にはすっきりむくみがなくなっている患者さんもいます。

カルシウム拮抗薬のその他注意点

その他の注意点として、カルシウム拮抗薬(特にジヒドロピリジン系)はCYP3A4という回路で代謝されるため、この回路を阻害するグレープフルーツを摂取すると薬が効きすぎてしまうことがあるので、グレープフルーツは基本的には避けましょう。

いずれにせよお薬を飲んでいる方で副作用や相互作用に関してご気になった方はご自身で判断せず、かかりつけの医師に相談することが大事です。

本記事のまとめ
  • カルシウム拮抗薬は最もよく使われる降圧薬の1つ
  • 大きく2種類に分かれ、それぞれ使われる用途が異なる
  • 重篤な副作用はごく稀だが、脚がむくむことには要注意

参考文献
1) BMJ. 2008;336(7653):1121
2) JAMA. 2002;288(23):2981
3) Kidney Int. 2007;72:1543-1549
4) J Hypertens. 2011;29:1270-1280
5) J Hypertens. 1996;14(8):1041
6) Am J Med. 2011;124:128–135
その他:UpToDate®︎

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この記事を書いた人

川口市安行吉岡で内科・循環器内科・糖尿病内科・呼吸器内科の診療を行っております。

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